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刑が軽すぎる医大教授の汚職事件(99/4/3)

 名古屋大学医学部の日高元教授が受けた収賄事件で、3月31日名古屋地裁は、懲役3年執行猶予5年、追徴金2億5600万円の有罪判決を受けた。
 何でも国立大学教授の研究行為に関する現金供与がわいろと認定され、教授が有罪判決を受けたのは初めてとのことだ。つまり、これまでは国立大学の教授という公務員の立場の人間が製薬会社からいくらお金をもらってもわいろ扱いされていなかったというわけだ。職務権限がからまなければ、お金をもらい放題という現状に初めてメスを入れられたのは歓迎すべきことなのだが、実際は罪が軽すぎはしないだろうか?執行猶予がついたということはまったく刑務所に入る必要がないということだ。そして追徴金の2億5000万円というのにしても、はっきりと把握できている賄賂の額がそれだけということで、別の名義のものや裏金、そして大塚製薬以外から受け取っていた金などを合わせると、その数倍の金をもらっていたことだろう。それには手付かずで一事不再理の原則からすると、これから死ぬまで金持ち生活が保証されることになる。
 賄賂というものは、むしろそのお金でどれだけ国に損をさせたかで罪がきまるべきだろう。仮に日高被告が実際は10億円もらっていても、それが大塚製薬やほかの製薬会社だけの損であれば、問題はない。でも10億円の賄賂を払うためには100億円の利益を期待するだろう。そのためには1000億円の売り上げが必要となる。これが薬局で売られている大衆薬なら問題はないが、保険で使われ、医者が処方すると拒否できない医家向けの薬なのだと問題だ。日高の賄賂のためにそうでなくとも赤字の医療保険が1000億円も損することになる。彼の追徴金はそれだけ取るべきなのだ。現在は赤字の医療保険は、いろいろな形で医療費を削減する。肺炎になっても抗生物質が使ってもらえない高齢者はざらにいる。この1000億円のために、医療を打ち切られる貧乏な人、病院を追い出される人が実は何人もいる。こうして、何十人かの人が日高のせいで死んでいるのも忘れてほしくない。
 私自身は、大学医学部教授があまりに特権階級になっていることが、日本の医学の発展を遅らせ、研究レベルを下げ、患者サービスを低下させ、さらに医療を高コスト化させるとともに、高齢社会に合わない医療体質を生み出していると考えている。
 医学部の教授が名誉だけでなく、このように金にもなる職業なので、さらに威張り放題の上に、定年まで身分が保証されているために、医師の誰もがなりたがる職業という風になっている。
 ところが、教授になるためには、大学に残っていないといけないし、論文をたくさん書かないといけない。臨床能力や学生や研修医の指導がいかに優秀でもそれはほとんど評価の対象にならない。せめて、外来患者の数で教授が決まるシステムであれば、大学の医者たちは教授になるために休日や夜間の診療をいとわなくなるし、患者サービスほ飛躍的に向上するだろうが、今は論文を少しでも書きたいので、患者になるべく時間をかけたくないのが現状だ。また医療ミスが続いていることにしても、大学病院では、多くの場合ベッド持ちが研修医なのだが、それを指導する助手がほとんど病棟に来ずに論文書きにいそしでいる。指導医の間に論文をたくさん書いたほうが教授になりやすいのだからこれも仕方ないことだ。せめて指導医の期間に書いた論文がノーカウントになればだいぶ状況は違うだろう。
 かくして大学に残ること、論文を書くことがプライオリティをもつと、開業医や臨床をしっかりやる医者が馬鹿にされることになる。国民の税金を使って勉強させてもらっていること(国立大学の場合、一人6000万円の税金が使われている)が忘れられ、医学部を出ても医者になろうとせず、研究者になろうとするわけだ。
 世界中でもっとも研究者志向が高い(アメリカでは臨床ができるほど金になるので優秀な臨床医はあこがれの的になっているが、日本はその逆である)のに、日本の医学の研究レベルは、ほかの分野と比べるとカス同然だ。患者をみていないので、研究テーマはほとんど外国の論文を読んで、それが日本人の体でもあてはまったというようなものばかりだ。まったくオリジナリティがない。患者をみていれば、何か新たな発見やニーズがみつかる(たとえば、高齢者の血圧はどのくらいだとその後のQOLがよいのかなど)。しかし、診ていないので、ろくなものが生れない。薬の開発力に関してもそのために日本は情けない限りだ。海外売り上げ比率が5%を超える製薬会社は上位20社中1社もない。こんなに国際競争力がない業種はそうないだろう。これも外国でいくらいい薬が開発されても、日本国内での治験が通らないと(これが何年もかかる)日本では発売できない。要するのに本の大学教授たちに気に入られないと、いくらいい薬でも日本では販売できない。
 日本で開発された薬が外国で売れないのも、効かないし副作用が少なくないからだ。というのは治験の際に、「やや有効」という主観で決められる項目があるし、副作用がでても「本剤との因果関係は薄いと思われる」という項目があるので、そこに丸をしてもらえれば、あまり効かなくて、副作用のある薬をいくらでも発売できる。
 ということは、大学教授に金をまいておけば、外国では誰も買ってくれない薬をいくらでも日本で売ることができるし、外国ではいい薬とされているものを日本で売れないようにできる。
 痛くない腹をさぐられたくなければ、外国でも認められるような薬を開発してから、そして自分たちが年収1200万円でできる生活をしてからものを言ったらどうだろう。一度、大学教授の家を週刊誌が取材すればよい。あるいは週に何回銀座に行っているかも。
 研究もだめ、臨床もだめなくせにお金は入るし、いばっていられるこのシステムが日本の医療をだめにしているが、さらに論文をたくさん書くために、専門分化がどんどん進んでいる。すると、一人の患者がいくつもの科に行かないといけなくなるし、検査もどんどん高度化する。これが医療費高騰の元凶で、老人が増えることだけではない。現に平成37年の国民医療費は141兆円と推定されているが、そのうち70兆円は若い人の医療費だ。これは現在の3倍にあたる。つまり若い人の医療費が高度化するから医療費の高騰がおこる。高齢者の医療費もお年寄りは倍もふえないのに、現在の10倍近くの医療費がかかるのはそれだけ医療が高度化するからなのだ。実際、歳をとるほど一人の人間がいくつも病気をもつことになるので、専門分化が進むと医療費はばか高くなる。大学中心の医療が改められないと医療費の高騰は押さえられない。教授たちは銀座に通い、邸宅に住むいっぽうで、国民の保険の負担率や税の負担率は増えるいっぽうだ。
 そういう流れのなかで、せめて教授たちは名誉にはなるが、金をもらうと刑務所送りだという前例ができれば、医者の倫理もましになるし、効かない薬が認可されなくなるし、少なくとも製薬会社のために働く医者も減ったことだろう。今回の判決では、仮に収賄をしても刑務所に行かなくて済むし、もらった金額以上は追徴されないことが保証されることになった。
 大学医学部教授の天下は続いたままで、臨床軽視、製薬会社べったり、専門分化の流れは変わらない。
 薬害エイズの事件でもあぶないことがわかっていて患者に非加熱製剤を投与し続けた医者たちは誰一人刑事でも民事でも訴えられていない。製薬会社と厚生省と安部というボスだけが悪者になっている。アメリカでは薬の副作用で患者が死んだり、病気をしたりすれば、莫大や賠償金が請求されるので、医者たちは必死に副作用を勉強している。
 司法がしっかりしないと医療費はかさむ一方だし、医療はよくならないのだ。
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