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臆病な独裁者たち(99/7/3)

 大方の予想に反してユーゴが和平案を受諾して、ひとまずユーゴ問題は解決した。今回のユーゴ空爆については、中国大使館を初め、誤爆が多く、しかも国連の決議にのっとったものでないNATOの行動であったこともあって、それほど国際世論を味方につけたものとは言えなかった。だから、無差別空爆はだんだん難しくなることが予想され、地上戦もやむなしという声が強かった。ところが、セルビア人というのが、歴史上まれにみるくらい抵抗する民族のため、ナポレオンにも、ロシアにも、ナチスにも降伏しなかったこともあって、戦争の泥沼化を懸念する声も強かった。
 そんなこんなで早期の戦争解決は、本当に多くの人をほっとさせるものだった。
 これに関して、私はもう一つ関心をもったことがある。それは、「現在の贅沢に慣れた独裁者たちは、人を殺すのは好きでも、自分の命は惜しいようだ」ということだ。湾岸戦争の時も、フセインが徹底抗戦すれば、イスラム教徒は、死を恐れないから闘いが長期化するだろうと考えられていた。現にイラン・イラク戦争の時は、イスラム革命の伝播を恐れたアメリカが膨大な近代兵器の支援をイラクのほうに行ったにもかかわらず、イラン人が聖戦と名うって死を恐れず闘い続けた結果、戦いは泥沼化した。
 結局、ミノシェビッチもフセインも死ぬのが怖かったのだろう。現世の独裁者として贅沢の限りを尽くしていれば、少しでも生きていたいと感じるほうが自然なのだろう。そういう点では、イラクに武器を与えすぎたために、イラクが変な行動をとったという非難がアメリカに向けられたが、フセインにしたい放題の贅沢をアメリカがさせてあげたおかげで、フセインが自分の命を大切にして、すぐに降伏したという風にも見ることができる。
 たとえは変わるが、オウムの麻原逮捕の時も、武装蜂起や集団自殺が恐れられたが、こちらが拍子抜けするほど麻原は簡単に投降し、裁判の長期化を狙ったり、精神障害者を装ったり、命乞いの姿勢が目立つ。これがアメリカの狂信的なカルトリーダーのように死を恐れないのであれば、被害はさらに広がっただろうし、今でさえ拡張を続けているオウムがもっと宗教的に拡張を続けていたかもしれない。これも私の見るところ、現世での贅沢と快楽のために、死が怖いことが抑止効果になったようだ。
 だとすると、外から見ると不愉快なことかもしれないが、日本の安全保障を考えれば、北朝鮮の金正日が贅沢三昧をしてくれるのは、日本にとってはありがたい。国民が餓えている上に武器だけはもっている上、資本主義の国はひどいという思想教育を徹底的に受けているだろうし、おそらく餓えもそういう国の陰謀だと教育しているはずなので、いつやけくそを起こしても不思議でないのに、それを金正日あるいは(北朝鮮のぜいたくをしているエリートたち)が、贅沢の限りをつくしているために、現世が幸せでたまらず、命が惜しいために、「戦争は絶対するな」と食い止めているとしたら、それに勝る安全保障はない。
 そう考えたら、どうせ金正日や北朝鮮エリートたちの贅沢に使われるかもしれないと食糧援助を惜しむよりも、好きなだけ贅沢をさせるほうが、武器をアメリカから大量に押し売りされるよりは、はるかに安上がりな安全保障策なのではないだろうか?
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