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トヨタに注目せよ(2000/4/2) 最近、21世紀の旗手はだれかというアンケートを『現代』という雑誌で受けた。 もちろん、好きなことを書かせてもらったのだが、実際は、私は個人の力が日本を変えていくより集団で力を発揮できるほうがかならず、凄いものを出せると考えている。ソニーのプレステ2にしても、一人の天才がというより、ソニーの集合秀才の勝利だと私は見ている。旧来の日本型教育を私が評価するのも、日本がアメリカに再逆転が可能とみるのも、集合秀才というシステムが機能しているからだ。結論的にいうと、物事がいろいろな分野で高度化する21世紀は、一人の天才というより、ある有能な集団(おそらくは企業)が日本(アメリカだってそうだろう)の旗手になるはずだと考えている。 さて、21世紀の旗手の候補であるが、私はソニーやイトーヨーカドー(セブンイレブンという何にでも使える端末は強い)、あるいはヤマト運輸(インターネット取引が盛んになるほど物流を押さえているところが強い)、NTT(グループ全体のインフラや開発力は凄い、株価は安すぎだが、上値がしこっている間はあがらないだろう)などを超えて、私がもっとも注目しているのはトヨタだ。 ここのすごさは、周囲の声にまどわされず、先を考えたビジョンがしっかりしていることだ。 つまり、旧来型経営のいいところを残しながら、新しいものも確実に押さえていく姿勢である。そして、周りの趨勢に振り回されて、コストが結果的に高くつく合併によるスケールメリットを狙わず、自分の会社の発展を前向きに考えていることである。 新しいものという点では、情報産業へのアプローチである。 別のエッセイでも主張しているようにネットの端末は、今後はパソコンではなくなる。次の候補はゲーム機、携帯電話(PHS含む)、そしてカーナビである。トヨタは、携帯電話の部分では、IDOの大株主として、早くもインターネットに耐えるレベルのCdma-OneUを導入し、現時点ではドコモのi-modeよりキャパシティの点ではリードしている。カーナビをネットの端末にするというという点では、メルセデスのITGSを初めてとして、世界中のカーナビの情報機能は、トヨタのモネとは勝負になっていない。さらにソニー・東急と合弁でCATVを使ったネット事業を始めるという。つまり、携帯、カーナビ、CATVという電話回線を使わないネット(プレステ2は電話回線を使う)の全分野で、パソコン以降のネット端末を握る会社はトヨタをおいてほかにないのだ。カーナビという情報端末は車社会であるほど、威力を発揮する。そういう点で、大きくリードしているトヨタは、アメリカも脅かすことだろう。GMやフォードは情報端末どころか、ただのカーナビでさえろくなものが作れていないのだから。 もちろん、自分で動かせる金が兆単位であるという財力の余裕も大きい。不良債権漬けになっている旧来の金融機関をよそに、トヨタの金融グループは有利にことを運んでいくだろう。 積極的に新規事業を展開する以上に、本業も他を圧倒するに違いない。ここが金融会社に変貌してしまったGEグループとの大きな差だ。 というのは、本業の面では日本型経営を守り抜いているからだ。一つは、特に向上労働者の終身雇用の維持である。これによって、ばんばんリストラを行う他社と比べてはるかに会社へのロイヤリティが高まり、クオリティコントロールが可能になる。目先の利益を考えてリストラばかりやっていると、できのいい技術者のほうがすぐに退社して、できの悪い奴のほうが残る傾向がある。技術の日産とかいうが、あんなにクビきりを行い、コストカッターを喜んでいる以上は、技術でトヨタを逆転することはあり得ないだろう。そして、少子化に伴う人手不足の際も、リストラの前科のある日産にはトヨタの入社試験ではねられた人間しかいかないことだろう。 学歴を正当に評価する点も買いたい。今回の張新社長も東大卒であるが、トヨタは歴代国立大学卒を社長に据えている。豊田一族であっても、幼稚舎から慶応というパターンではなく、きちんと国立大学の入学試験を勝ちぬいてきた人が社長になっている。 これは学力低下の文脈を考えると大きい。これからは学歴がものを言わない時代と錯覚されているが、国民の多くが勉強をしない時代では、実はそれが大きな誤解だ。というのは、学力低下は下の大学ほど深刻なのだ。もちろん、東大の学力も下がっているが、それ以上に東大と京大、東大と早慶の差が広がり、さらに下位校の学力が惨憺たるものなのだ。受験戦争が機能している時代であれば、東大と京大や、東大と早慶、あるいはもっと下位の学校でも、学力の差はほとんどなくて、当日のコンディションの差という感じであったが、今はそうでない。つまり、受験戦争や学歴社会が顕著であった時代のほうが、学校名など気にせずにリクルートできたのだ。今は学校名をみておかないと、努力をする動機も、あるいは仕事を理解する上での基礎学力も、英文の読解力も(旅行用の会話は得意でも)使い物にならない可能性が昔と比べ物にならないくらい大きい。そういう点で学歴を評価しているトヨタは、高学歴の人間にアピールする力も大きいし、今後ますます優秀な人材を揃えるポテンシャルがある。 21世紀の日本を引っ張っていってくれそうな会社の一番手はやはりトヨタである。 名古屋の首都移転も冗談でなくなるかもしれない。 |
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