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どうしてうまくいっていることから素直に学べない?(2001/2/15) 前回のエッセイで、八十年代の末頃からアメリカやイギリスでは、試験重視、家庭学習重視、理数教育重視のシステムに大変革がなされ、生徒の学力が上がるばかりか、犯罪も減って改革は大成功に終わっているし、現在さらにこの路線が 強化されようとしている話をした。文部省の取り巻きの学者は、このようなアメ リカ、イギリス、あるいは北欧やインドの教育などを知らないとしか思えないと 書いたわけだが、もう一つ可能性がないわけではない。 それは、自分の学んできた学問に縛られ過ぎて、他の成功例から素直に学ぶこ とができなくなっていることだ。 偉くなること、地位が上がることの弊害として、周囲の人間のアドバイスが聞 けず、自分に都合のいい論理ばかり耳に入れて、結果的に堕落したり、馬鹿にさ れたりするというのは、『裸の王様』という童話でも描かれていることだが、 ことが政策に及ぶとなると笑っていられない。 こういう『裸の王様』学者たちは、自分たちの理論が正しいと信じたままで、 王様気取りでいるが、それによって、よい教育の機会を奪われた子どもや、その ために生じる学力レベルの低い大人を抱えてしまう、他の日本国民としてはまさ に悲劇である。 これと同じことが私が本業としている老年医学の世界でも起こっている。 ほとんど老年医療の現場に携わったことのない老化や成人病の研究者が、老年医学のオーソリティのような顔をして、政府や厚生省のブレーンをやる。肺が専門の人は肺の老化が大切といい、心臓が専門の人は心臓の老化が大切といい、骨が専門の人は骨の老化が大切といい、それぞれの予防薬を出しては、老人は大量の薬を飲まされる。そこには人間を総合的に診る視点はない。しかし、それでも彼らが長寿や医療費削減に貢献できているのなら、それはそれでよしとしなければいけない。私がかくあるべしというより、実績のほうがはるかにものを言うのだから。 しかし、残念ながら大学の老人科がはばを聞かせている多くの県で、高齢者の 平均寿命の伸びが悪い上に、老人医療費もたくさんかかっている。 その中で最も成功しているのは、長野県である。この県にある唯一の医学部信州大学には老人科はないし、老年内科の学会指導医もわずか2人しかいない。 しかし、平均寿命は男性1位、女性4位、そして老人医療費は全国最低である。 ここの老人医療の成功の秘訣は、地域医療が充実していることである。患者を 総合的に診て往診もいとわない態度が、結局、寿命にも老人医療費にもよい影響を与えているのだ。 こういう成功例から学ぶことができれば、もっと日本の老人医療はよくなる はずである。 教育にしても、老人医療にしても、成功者から学ばず、学者が自分の理論で好きなことを言っている分野は、結局国民の利益になっていない。 わが精神分析業界も、治療がうまくいっている流派のいうことを素直に聞くべ きだと考えているし、それ以外の業界でも状況は似たようなもののはずである。 自分のことを中途半端に頭がいいなどと思わず、素直に成功者から学ぶ、その姿勢があれば、政治ももっとうまくいくだろうし、またこの姿勢は人間を確実に頭をよくしていき、ビジネスでのサクセスにつながるはずだ。 |
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