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私がなぜたくさん本を書くのか?(2001/4/1)

 今、生まれてこの方初めてというほど忙しい。このメールマガジンが遅れ気味なのも、このエッセイの執筆が遅れ気味のためと言える(それでも何とかこの原稿は 3月31日に入稿しているのであるが)。
 何でそんなに忙しいのかというと、立て続けに本を出すからである。3月には 『大人のための勉強法 パワーアップ編』を出したと思えば、月末には渡部昇一先生との対談本『痛快!知的生活の勧め』を出すし、4月、5月中に出る予定の本と しては、アスキーからビジネス心理学のノウハウ書、失敗学の畑村洋太郎先生との 対談本、PHPからは櫻井よし子さんとの対談本、ビジネス社からは親子円満の心理学、朝日出版社からは子どもの勉強法の本、そして東大の合格最低点の発表を受 けて、『新受験技法』にもかなりの改訂を加えて4月の末には出すという具合である。そして、さらに現在執筆中の本が3冊もある。ほかにもいろいろな雑誌や新聞 からの執筆依頼があり、たとえば、今年になってからだけでも、『教育は何を目指すべきか』、『アホかもしれない日本人』、『教育の論点』などの1章を書いたり もしている。
 何でそんなに引きうけるのかということになるが、一つには私の人生戦略もあるだろう。『大人のための勉強法』が、昨年の新書の中では2位という大ベストセラー になったが、そこで、どっと執筆依頼が来る。こういうチャンスを活かさないと、 次のチャンスを何年か待たないといけない。本を出すというのは、宝くじを買うよ うなものである。何が大当たりするかわからない現在、1冊出すより、十冊出すほうがミリオンセラーの可能性は強くなるのは当たり前である。ここで、世間と書店 に名前が知られるようになれば、当面は出したい本が出しつづけられるし、世間様 にも影響力を保てるというわけだ。
 ただ、これだけ書きつづけて感じるのは、本を出しつづけることは本当に勉強に なるということだ。『大人のための勉強法』でも強調したことだが、人間の記憶には、入力、貯蔵、出力の3段階がある。入力をよくするためには理解と関心が、貯蔵をよくするには復習が必要なわけだが、出力をよくするには実際に出力をするしかない。たとえば、受験勉強の際には、覚えた内容を問題集を使って出力してみて、実際の答案ではどのような答え方が求められ、そのためには何を覚え、どんな考え方をしないといけないのかを知るしかないのだ。プレゼンテーションをやらないで、 プレゼンテーションがうまくいくわけがないし、小論文を書かないで小論文をうまくすることはまずできない。
 つまり、著書というのは、書くトレーニングをして、つまり書きまくっていくうちにうまく書けるようになるのだ。そして、本は物知りでないと書けないと思うかもしれないが、実際は書いているうちに、ここの知識が足りないと気づいたり、ここの理解が中途半端だと気づいたり、わかりやすく説明できていないと気づいたりするものだ。つまり、書くという作業によってメタ認知も働くし、理解も進むわけだが、そこで出てきた課題である理解や知識の不足を補うための勉強もしなくてはならなくなる。
 つまり、書いてそれを発表することは知識の入力を増やし、出力のトレーニングとなり、さらにメタ認知のトレーニングにもなるという大事な頭の訓練なのである。 このチャンスを活かさない手はない。つまり、私は頭がよくなりたいから著作の依頼を引き受けるのである。
 対談本なら楽だろうという人もいるが、実はそうでもない。3回くらい4時間くらいのディスカッションをして、ゲラがあがってきた際の直しはかなり大変である。 話し言葉でしゃべっていたことを書き言葉に直す際に、かなりきちんとした裏づけを取る作業も生じてくる。これさえなければ、もっと本が書けるし、もっと勉強ができると思わないでもない。
 それでも、私は対談本が大好きである。別の視点の別の知識の持ち主と対談することで、確実に自らの推論のバリエーションが増え、知識も増す。これは素晴らし い作業である。
 私が本を書きつづけるのは、頭をよくするためもさることながら、心の健康法としても利用したいからだ。
 書くことが心の健康につながるという考え方は認知療法でも、森田療法でも使われるものだが、この話をしだすと長くなるので、私の心の健康法としての著述活動 に触れておきたい。
 私の著書を読んだ人で私に会う人に、ほぼ必ず言われることであるが、「もっとこわい人だと思っていた」ということがある。それだけ書くものでは攻撃的だということだろう(そのために大して本が売れないのかもしれないが)。しかし、実物 は、人様に気ばかり遣って、年下の人間にも呼び捨てできずに、さんづけをしてしまう気の弱い人間であるし、何より人に頭を下げるのはただ、という人生観があるので、何でもペコペコしてしまって小人物に見えることこのうえない。ついでにい うとカミさんにはもっと弱い(ただし、これもプライベートでの話で、討論番組に出た際はやはり凶暴になるので、世間はやはり怖い人と見るようだ)
 そういう私は、書くことで別の「言いたいことの言える人間」になっているのだろう。政治や医療問題、教育問題など言いたいことを書きつける爽快感がたまらない。こういう際により説得力をもたせたいから勉強していると言っても過言でない。
 そんなこんなで私にとっては著作は、頭のトレーニングであり、心の健康法である。仕事をいくらやりすぎてもストレスになぞならない(と言いながらやはり締めきり前は胃が痛むのだが)
 そういうわけで出版社の人が読んでいたら、もっと仕事をください。特に今年はエッセイストにチャレンジするつもりですので、その手の雑誌の人はお願いします (最後だけですます調なので、いかに本音かわかってもらえるだろう)
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