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小泉首相に何を望むべきか(2001/5/1)

 国民の(本来は国民ではなく、自民党員であるが)期待を一心に担って、小泉新政権が誕生した。
 郵政民営化を主張する規制緩和論者の小泉氏には、日本をかえてもらえるのではないかという期待が否が応でも高まっているが、私も本業の老年精神科医の立場から注文したいことがある。
 小泉氏は、実は郵政族ではなく、厚生大臣を3回も経験した厚生行政のスペシャ リストである。そして、この厚生行政こそが、規制緩和の進む日本の行政の中で最も規制緩和や市場原理の導入が遅れている分野なのである。
 いい医療をやっていても医者は宣伝をできない。よしんば口コミで患者が集まってきても、今度はベッド数を増やすことに規制がかかっているので、結果的に患者さんに門前払いを食らわすか、待ち時間を延ばさないといけない。おかげで、旧態依然の努力しない病院が淘汰されない。
 外国のいい薬についても、日本でなかなか認可しないので導入が遅れ、保護を受 けた製薬会社の競争力は弱い。日本の製薬会社の海外売り上げ比率はわずか3%代 である。
 いろいろしがらみがあるだろうが、専門分野の医療の世界で、きちんと規制緩和 と市場原理の導入をしてくれることを何にも増して期待している。
 もう一つ期待したいのは、自民党の執行部を握ったことの意味を考えてほしいということだ。
 イギリスなどの場合は、保守党対労働党の対決は、トップの政策どうしの対決になっているので、議員内閣制の国家であっても、サッチャーやブレアのように自分 のやりたい政治ができる。
 日本は首相がリーダーシップをとれる政治ができないので、大統領制にしようという声が強いが、党の総裁というのは、実際は独裁権をもっている。特に現在のよ うに企業献金が事実上禁止され、政党助成金を政党がたんまりもっている状況ではそうだ。小沢自由党と保守党を見ればわかるように、出ていった側は貧乏をし、 残った側はTVCMを何本も打てるくらいの資金が残る。
 加藤政局の際に、自民党の執行部はさんざん除名や、選挙の際の嫌がらせの脅しをかけたとされる。しかし、実際は除名もできなかっただろうし、選挙での嫌がらせもできなかっただろう。たとえば30人除名したら、過半数の維持が困難になる。 選挙で嫌がらせをしても、無党派の風が吹いている現在では、かえって判官びいき のおかげで加藤派はかなり選挙で善戦したはずだ。
 しかし、現在の小泉執行部は違う。人気のある側が執行部を握っているのである (これが当たり前の姿なのだが)。何かしらの改革をやろうとする際に、言うことを聞かなければ、除名することができる。除名された側は政党助成金ももらえないし、その上、判官びいきを受けるどころか、守旧派のレッテルを貼られるから選挙には勝てない。結果的に小泉氏のいうことを聞かざるを得ない。
 たとえば、派閥解消を本気でやると小泉が言い出して、橋本派が反対するとする。 反対する人間は除名すると言えば、それでも橋本派に残る人間はせいぜい20人だろう。彼らが新党を結成しても、今の保守党より票が取れないだろう。
 そして、ウルトラCとして、自由党や場合によっては民主党とさえ、救国改革内閣と銘うって連立政権が組める。
 これが執行部を握った強みなのだ。YKKで百人規模の新党を結成しても、出ていった側は政治資金もないし、百人集まるかどうかも疑問だ。民主党とくっつくこ とになっても、結局鳩山のほうが力関係で上になるかもしれない。
 勝っているときに何ができるかで人間の評価は決まる。共産党の腰巾着だったゴ ルバチョフは党を握ると同時に、やりたい放題の改革をやった。ソ連を崩壊させることになったが、国際的な評価は高まる一方だ。
 小選挙区と企業献金の事実上禁止と、政党助成金の3点セットはこちらが考える以上に党のトップに強大な権力を与える。仮にその首相が極めて小派閥の出身であったとしてもだ。ただし、これは国民的な人気があった場合の話である。橋本が政権をとっていても、追い出したい人を追い出しても、民主党や自由党から人を 引っ張って来れないし、連立政権も組めない。
 小泉氏は、自分はものすごく力をもっていることを自覚して大胆な改革をしてほ しい。
 逆に小泉でもできないとなると自民党にはカードがなくなる。小選挙区制では次の選挙で勝てない。  そういう点であえて独裁者としての小泉首相が見たいのである。
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