和田秀樹監修「学力向上!親の会」のご案内
コンテンツ

緑鐵受験指導ゼミナールへのリンク
ヒデキ・ワダ・インスティテュートへのリンク
和親の会

新刊本のご案内
あなたのココロが、きっと元気になってくれる34のアドバイス
和田秀樹のTOEIC TEST 600 突破大計画
大学へ行こう!
 
和田秀樹の英語脳力全開 単語ドリル 基礎編
 
 


不景気と好況のパラダイムを考えた経済学(2001/8/1)

 前回のWEBエッセイで、現在、日本はそろそろ生産性の経済学から訣別すべきであると主張した。
 生産性をあげるために、賃金格差をつけろだとか、相続税や法人税、所得税などを減税して、むしろ間接税を増やせとか、要するに富める者と貧しき者の格差を広げることで、できる人間、生産性の高い人間にインセンティブをつけようという発想であるが、これでは、供給側のほうはなおのこと生産性があがるが、需要は増えるという見込みはない。むしろ、どうすれば有効需要が増えるのかを真剣に考えるべき時期なのではないかという提言だった。
 では、どうすれば解決がつくのか?という問題を私につきつける人もいるし、あるいは、このような主張は左翼学者の主張にすぎないという人もいるだろう。
 私が言いたいのは、好況の際と不況の際の経済は違うということである。 景気がよい(と大衆が信じている時期)は放っておいてもみんなが金を使う。失業しても、次に雇ってもらえるところがあると考えるから、失業不安も少ないし、それによって財布の紐がしまることも少ない。
 そういう時に消費税をあげても、それほど消費は落ち込まないだろうし、財政はなお健全化する。リストラをやるにしても、そういう時期にやれば、ずっとスムーズにいくはずだ。
 逆に不景気の時期であれば、消費税をあげれば確実に落ち込むし、リストラをやれば、さらに失業不安をあおってよけいにものを買わなくなる。それがさらに景気を悪くして、よけいに歳入欠陥がひどくなったり、さらなるリストラ をやらなければならないという悪循環に陥るわけだ。
 小泉内閣になって以来、国民も痛みに耐えるべきだという論調が強まっている。しかし、誰がという点は本来は不景気と景気のいい時期では違うはずなのである。
 簡単に言えば、景気のいい時期に金持ちはぎっちり稼げばよいし、多少貧富の差が広がるのはかまわない。それでも、一般大衆は、自分たちも豊かだと思っているから、それほど不満は起きないし、買い控えも起こらない。今の(つい最近までのといったほうが正確になるかもしれないが)アメリカはまさにそんな状態だった。少なくとも財政が黒字で景気がよいのであれば、直接税をいくら減税したり、相続税をゼロにして金持ち優遇にしたって文句はないはずだ。
 しかし、景気が悪い時は、金持ちががまんすべきだろう。
 現状の消費不況の打開には、やはりお金は要る。たとえば、リストラ対策として雇用保険を1年ないし2年払えるように延長できるだけで、かなり雇用不安が和らぐだろう。あるいは、老後の不安を解消するためには、福祉切捨てより、福祉の充実のほうが大切である。(私は福祉論者ではない。景気が悪い時の心理的対策をいっているだけで、福祉の切り捨てや雇用保険のカットは国民が浮かれている好況時にやるべきだと言っているのだ)
 その資金であるが、やはり直接税に頼らざるを得ない。こんな時期に消費税を上げれば、よけいに消費税が落ち込むのが目に見えているからだ。
 法人税というのは、原則的に利益のあがっている会社から取るものだから、 このご時世に儲かっているのなら、少し泣いてもらうしかないだろう。所得税にしても、景気が悪くなって、家も不動産もあるいはグルメもすべてデフレ現象を起こしているのだから、金持ちから税金をたくさんとってもそれほど痛くないはずだ。唯一景気が悪いのに値段が下がっていないのはブランド品くらいだろうが、そんなものは日本で作っていないのだから、金があるのに、国のために使わず、外国ブランドを買い漁るために税金を高くしない理由にはならない。
 たとえば、農業国の時代には、豊作の時には地主が大儲けしたが、凶作のと きは、地主は年貢を負けてやったり、場合によっては自分の蔵から食べ物を分け与えていたはずだ。そうしないと、労働者が飢え死にして、翌年天候がよくなっても十分な生産があげられなくなる。場合によっては暴動が起こって食べ物を分け与えない以上の損をしてしまう。景気がいいときに金持ちが儲けて、景気が悪い時には金持ちが我慢するのは、要するに中以下の層には余裕がないから、すぐに倒れてしまう。昔のように飢え死にで生産性が下がることはなくても、日本の場合、景気がよくても悪くてものが買えない貧困層が少なく、景気がよいとものを買うが、悪いとものを買わない「中流」がたくさんいるから、中以下の人に安心感を与えないと景気はよくならないのだ。
 直接税をあげると海外からの投資が冷え込むというが、そんなものをあてにしなくても個人金融資産は1400兆円もある。どうせ税金で取られるのなら、損する可能性がある投資をして所得を減らしておこうと考える人が出るかもしれない。海外からの投資だって、要するに日本では儲からないから少ないのであって、多少税金が高くても、人がものを買い、景気のいい北欧諸国にはガンガン投資がいっている。そして彼らの経済成長率は6%近くなっているのだ。 投資家と言うのはもうかれば税金が高くても投資するし、儲からなければどんなに税金が安くても投資などしない。今、アフリカの景気の悪い国が、税金を タダにしますから投資をしてくれと言って誰が投資をするというのか?
 実は、このエッセイを書こうと思ったのは、あの「松下」が終身雇用をやめるという記事を週刊朝日で目にしたからだ。
 確かに松下は利益が出ていない。しかし、これは消費不況のためだろう。松下が終身雇用をやめることで、なだれをうったようによそがそれをやめ始めたらどうなるのだろう。
 この手の耐久消費財の会社は、一通り家電が行き渡って、ほしいものがないから売れないのだと説明される。私はそうは考えない。ほしいものはあるが、高いと思うと買えないのである。たとえば、DVDプレイヤーなどは高かった頃は見向きもされなかったが、プレイステーション2以降の値引き合戦のあとは飛ぶように売れている。値段が下がらないと買わないというのは、一昔前のアメリカでよく見られた光景だ。当時の日本企業は、高くても買ってくれる一般大衆を抱えていたので、そこで大量生産し、安くなってからアメリカ市場に投入し、大儲けをした。この豊かな大衆は、松下などの日本企業が、景気が悪くてもクビをきらずに、経営者がそれほど高給をとらずにがまんして育ててきたもののはずだ。
 リストラの中止や高い税金など、今こそ金持ちが我慢すべきときだ。余裕のある彼らが不安に振り回されずに痛みを引きうけてくれれば、消費不況は多少よくなる可能性は大きい。
 さしあたっては、所得税や法人税を大幅増税する代わりに、経費を大幅に認めるというのはどうだろうか?金を使う人は税金はこれまで通り程度で済むし、 この不景気の時期に金を使わず、金を残したい国賊はたんまり税金をとられるというシステムだ。
 この手の「金を使い」「税金をたくさん取られる」という我慢をしてもらって、それで景気がよくなったあかつきには、彼らが多少大儲けをしてもひがんだり、責めたりしてはいけない。その時にこそ、逆に累進課税をゆるめて、ぎっちり と金を残してほしいというのが私の提言である。
 余裕のあるほうが我慢するという当たり前のことができない限り日本の明日は暗い。しかし、金持ちの狡猾な戦術でマスコミやジャーナリストやテレビに出る経済人をみんな金持ちにしたから、彼らは守りに入りつづけるだろう。



(C) 2000-2006 Hideki Wada Institute,co All rights reserved.