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同時多発テロに思う(2001/9/15)

 アメリカ、ニューヨークとワシントンDCで起こった同時多発テロは、たまたま翌日アメリカに出発する予定だったこともあって、考えさせられることの 多い事件だった。
 まず考えたことは、これからの時代の国防とは何かということだ。
 冷戦が終わり、アメリカが唯一の軍事のスーパーパワーになった現在、国同士の戦争というのは、本当に局地的な民族紛争などをのぞいては起こらないだろう。中国だって損得で動く国だから、戦争をやるぞというブラフは見せても、戦争はするまい。
 多少、うかつな独裁者が現れて、まぬけな戦争を始めたところで、アメリカ ににらまれたらあっという間に戦争が終結することは、湾岸戦争やユーゴ紛争をみれば明らかだ。特に独裁者が死ぬのを怖がるような人間だった場合は、最後まで抵抗して、陸軍が国に入っていかなければならないという事態が生じないので、少なくともアメリカ兵の犠牲はほとんど覚悟しないで済むし、日本 に被害が及ぶことはまずないだろう。
 しかし、テロとなると話は別となる。ハイジャックした旅客機が武器になる ことを今回の事件ははからずも教えてくれたわけだが、日本で同じことをやっ たらやはり万単位で人を殺すことは可能である。北朝鮮ができの悪いミサイルを打ちこむようなことをしても、そう簡単にそれだけの人は殺せまい(これだって実際に起こる確率はテロよりははるかに低いと私は見ているが)。
 日本は本当にテロに弱い国だ。飛行機おたくの青年に簡単に飛行機がハイ ジャックされてしまうし、サリン事件のときも無防備そのものだった。欧米ではほとんど見られない満員電車の存在もテロリストにはありがたい。テロを前提にしていないので、いろいろな検問もきわめてずさんだ。
 今後は、このあたりのテロ対策も、重大な国防ということになる。起こりそ うもない戦争に備えて国の金がない時期に毎年何兆もの金を使うより、国内のテロ予防のほうがはるかに少ない費用で、はるかに多くの人命を救う。国防に対する発想の転換は急務だ。
 そして何よりも大切なのは、テロの標的にならないことである。
 それを考えると、今の日本の外交姿勢は、国民の安全をまったく考えていない間抜けなものと言える。
 前のイラク空爆の際も、イギリスと並んで真っ先にアメリカ支持を表明したのは日本だった。もう少し、いろいろな国の反応を待ってからでもいいものを何でもアメリカの味方のようにふるまう。イスラム原理運動が力をつけ、サウジアラビアやUAEでさえ反米的な気運が高まっているというのに、これは危険この上ない。よしんばテロの対象にならなくても、第二のオイルショックは 十分あり得る。アメリカやイギリスと違って、日本は石油がとれない国なのである。そしてアメリカ支持のおかげで、日本に石油が回ってこなくなった際に アメリカが回してくれる見こみがどれだけあるのかを冷静に考えてほしい。 そして、このようなアメリカの属国ぶりのアピールはテロの標的を買って出ているようなものだ。
 これからのアメリカの動きは、ブッシュの心理で決まる。ここで考えないといけないのは、景気停滞の国民心理と、ブッシュ自身が石油産業で利益を得る一族の人間であり、また彼の支持基盤もアメリカの石油メジャーであるということだ。
 アメリカ人は不景気になるとその責任の矛先を大統領に向ける。こういう際の常套手段は、悪者退治の戦争である。今回のアメリカ人の怒りを考えると、ちょっとでもテロに関係があった国を空爆すればアメリカ国民は歓喜し、 ブッシュの人気は上がる。当然ブッシュは報復攻撃をやりたくてうずうずしているはずだ。
 当然ラディーンが犯人ということにされ、アフガニスタンのタリバンに身柄引渡しを要求する。当然タリバンは断るので、爆撃を受けることになる。
 ここまではよい。しかし、ブッシュにしてみればアフガニスタンを空爆しても石油の値段は上がらない。中東を何としてでも巻き込む必要がある。支援の疑いでパレスチナや、あるいはテロ支援国ということでスーダンとリビアを、 ついでにイラクあたりも空爆してイスラム原理主義者たちを駆逐するという大義名分の無差別爆撃を行うだろうし、アメリカ大衆もそれを支持するだろう。当然、イスラム国の間では反米気運ははるかに高まり、原理主義者も強い結束を見せるはずだ。
 このときに、日本が間抜けにも真っ先にアメリカに支持を表明すれば、テロ に対する軽快が厳重で、第二のハイジャック、同時テロがやりにくくなってい るアメリカの代わりに日本が見せしめに攻撃される可能性は小さくない。
 アメリカを支持するのはかまわないが、頼むから「真っ先」というのだけはやめてほしいのだ。
 こう考えると、ガイドラインを始めとして、憲法を改正してでもアメリカの敵国に日本も共同攻撃するという条約の締結がいかに危険かがわかる。国が貧乏なのを言い訳にしてのらくらと逃げているほうがよほど賢いわけだ。
 まあ、日本の間抜けな政治家の人たちは皇居がハイジャックされた飛行機につっこまれるくらいの目に合わないと、いかに自分たちが反国防的な外交をしているのかに気付かないだろうが。そして、彼らならやりかねないのである。 (私は天皇陛下を敬愛しているからこそ、右とかタカ派とか言われる人に思いとどまってほしいのだ。自分たちの戦争をやりたい、自己愛をみたしたいため に、これだけ長く続いた皇室が壊されてしまうのに国民として耐えられないのである)。
 ついでに言うと、イギリスだって中東問題で真っ先にアメリカを支持するのは、BPのようなメジャーを有する上、北海油田のおかげで産油国になっているから、中東があれるほうがイギリスの国益にかなっているということを忘れてはいけない。まったく国益にもならないのに、アメリカの尻馬に乗って反イスラム的な態度をとる危険を思い知ったほうがよい。彼らは経済で戦争をやるのである。
 今回のテロで痛感したことがもう一つある。
 それは、日本人の勤勉神話がやはりウソだったということである。
 午前9時というのに、多くの駐在員は仕事をしておらず、おかげで無事だったことがわかった。朝の早くから夜の遅くまで働くというのは過去の伝説だったのだ。
 大体、日本人の働き過ぎ、勉強のし過ぎというのは、かつてはそうであったかもしれないが、外国の批判を真に受け、国内のマスコミもこぞって大騒ぎし たおかげで、とっくの昔に伝説になっている。99年の調査では子どもの一日平均の勉強時間はすでに世界最低レベルになっているのだ。OECDの調査でも93年の時点で日本の労働者の年間労働時間はアメリカに抜かれ、その差は広がりつづけている。ついでに言うと、アメリカの労働者と比べ物にならないくらいアメリカのエリートは働く。日本のエリートといわれる人たちが夜になると、すぐにお酒を飲むのと大違いなのだ。これでは勝てるわけがない。
 時代が変わっても、昔の姿を信じつづけ、アメリカやマスコミの洗脳を受けつづける。そして、これが明らかに国力を落としている。
 世界をまたにかけ、エリートの最前線のように言われる海外駐在員ですら、このありさまなのだから、そろそろ日本人働き蜂伝説と訣別してはどうかというのが、私の第二の感想である。
 この同時テロでいろいろな意味でアメリカのいうことを無批判に聞いていることの危険性を痛感させられたわけだ。







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